
70MPaサーボシステムのQ&A
- Q1.
- 70MPaサーボシステムは低圧サーボシステム(14MPa、21MPa)と比べてどのようなメリットがありますか。
- Q2.
- サーボ弁を油圧ユニットに配置する場合と、油圧シリンダに搭載する場合の違いは何ですか。
- Q3.
- 変位制御でアナログ変位計とデジタル変位計を使用する場合の違いは何ですか。
- Q4.
- 1台のポンプで複数の油圧シリンダを制御する場合、注意点は何ですか。
- Q5.
- 荷重制御と変位制御の切り換えは円滑に行えますか。
- Q6.
- 油圧シリンダの変位以外に試験体の変位などで制御が可能ですか。
- Q7.
- 非常停止後の復旧はスムースに行えますか。
- Q8.
- 既設油圧シリンダを70MPaサーボシステムに流用するための条件は何ですか。
- Q9.
- 複数軸の制御で70MPaサーボシステムと自動制御静的加力装置を共用することは可能ですか。
- Q10.
- 「70MPaサーボシステム」と「自動制御静的加力装置」との違いは何ですか。
- Q1.
70MPaサーボシステムは低圧サーボシステム(14MPa、21MPa)と比べてどのようなメリットがありますか。
- A1.
同じ出力の油圧シリンダでは圧力が高いほど受圧面積が小さくでき、油圧シリンダはコンパクトに
なります。
油圧シリンダを使用する場合、取り付けスペースやハンドリングを考えてコンパクトであることが
望ましく、低圧サーボシステムより70MPaサーボシステムを使用するメリットは大きいと言えます。
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- Q2.
サーボ弁を油圧ユニットに配置する場合と、油圧シリンダに搭載する場合の違いは何ですか。
- A2.
サーボ弁を油圧ユニットに配置する場合は、制御ループに長い油圧ホースが入ってしまう事が多く、
動作遅れを伴い制御感度を上げることができなくなります。
油圧シリンダにサーボ弁を搭載する事で、油圧シリンダとサーボ弁を直結することができ、
デジタル変位計による変位制御や、相互に外乱を受ける可能性がある多軸制御でも安定した
精密制御が可能となります。このため理研70MPaサーボシステムでは油圧シリンダにサーボ弁を
搭載しています。
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- Q3.
変位制御でアナログ変位計とデジタル変位計を使用する場合の違いは何ですか。
- A3.
デジタル変位計は分解能と信号安定性で優れており、最近は使用可能な装置が増えています。
一方、アナログ変位計は制御装置と計測装置への信号分配が容易に可能です。
計測を伴う制御にデジタル変位計を使用する場合は、計測用としてアナログ変位計を併設するか、
またはデジタル変位信号を計測側で受け取り可能なように改造することが必要となります。
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- Q4.
1台のポンプで複数の油圧シリンダを制御する場合、注意点は何ですか。
- A4.
高圧力を保持する油圧シリンダと低圧力で速く動作する油圧シリンダを同一回路から分岐して
使用する場合、圧力が保持できるようポンプ吐出流量を制限しないと高圧力を維持できない点で
注意が必要です。
このような場合、速度制限を設けることが必要となりますが、制御誤差に応じてサーボ弁が動くため
サーボ弁の開度に制限をすることはできません。
理研70MPaサーボシステムはこうした状況でも高圧力が維持できるようブロック機構を設けています。
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- Q5.
荷重制御と変位制御の切り換えは円滑に行えますか。
- A5.
70MPaサーボシステムは一般に低速・高荷重の用途に使用されます。
このため出力演算が比較的簡単なロジックで行うことが出来、制御種類の切り換えは現在値を
逐次目標値に設定するだけで可能です。
Q2で示す動作遅れを除外し明確なロジックで制御する、こうした考え方が安全性を高めています。
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- Q6.
油圧シリンダの変位以外に試験体の変位などで制御が可能ですか。
- A6.
70MPaサーボシステムは油圧シリンダが前進(伸びる向き)で、荷重や変位などの制御量が
プラス増分であるよう設定するという原則があります。
この原則に立てば試験体の変位などでも制御が可能です。
一方、バックラッシュのようなガタや鞍型の動きをする信号は直接には扱えないことになります。
こうした場合は、油圧シリンダの変位で制御を行い、要求信号で停止を行うことになるので
停止精度が落ちる場合があります。
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- Q7.
非常停止後の復旧はスムースに行えますか。
- A7.
70MPaサーボシステムはサーボ弁と油圧シリンダとの間に電磁弁を搭載しており、
緊急停止や終了時にこの弁を閉鎖し、危険防止を図ります。緊急停止後の作動は、
サーボ弁制御開始→ポンプ立ち上げ→電磁弁解放の順序で行うことでスムースな復旧が
可能となります。
通常、サーボは緊急停止をすると復旧が大変という考えがありますが、
理研70MPaサーボシステムでは現状復旧が容易に行えるため、操作者の負担が軽減されます。
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- Q8.
既設油圧シリンダを70MPaサーボシステムに流用するための条件は何ですか。
- A8.
サーボでは押側と引側の両方に高圧がかかる場合があるため、油圧シリンダの最高使用圧力を
確認することが必要です。
また、通常の油圧シリンダとして長期間使用しているとゴミが混入している場合があります。
こうしたことから、70MPaサーボシステムに適用するには点検、整備を行った上で流用することが
必要です。
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- Q9.
複数軸の制御で70MPaサーボシステムと自動制御静的加力装置を共用することは可能ですか。
- A9.
それぞれの特長を最大限に発揮して共用することが可能です。
理研ではこうした使用用途にも対応可能な制御ソフトが用意されています。
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- Q10.
「70MPaサーボシステム」と「自動制御静的加力装置」との違いは何ですか。
- A10.
(1)加力装置が優れている点
(a)最高使用圧力まで使用可能
一般に油圧サーボでは油圧ポンプと油圧シリンダ負荷ポートに圧力差が必要で、
70MPaサーボシステムにおいても70MPaまで油圧シリンダを使用することが出来ません。
流速により異なりますが、3MPa程度は圧力損失分を考慮して最高使用荷重を決定します。
一方、加力装置は70MPa油圧シリンダの最高使用荷重まで使うことができます。
(b)発熱が少なく静か
加力装置は目標到達で加圧・減圧機器は停止し、その時点では騒音は50dB以下となります。
これに対して、70MPaサーボシステムは目標到達後の保持状態でもポンプは作動し、
常時設定圧を保持するため作動音が継続します。
対策として、圧力保持用小型ポンプの併設、油圧ポンプ内部に吸音材を貼り付け、
油圧ポンプ周辺に遮蔽板の設置することや地下ピットに設置などが行われています。
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(2)70MPaサーボシステムが優れている点
(a)荷重ゼロ付近での制御精度が良い
加力装置は加圧、減圧、方向切換にそれぞれ専用機器を割り当て(インバータ駆動ポンプ、
高速オンオフ弁、電磁弁)、それらが連動して自動的に載荷と除荷を行うシステムです。
除荷では油圧シリンダの残圧を利用し高速オンオフ弁の開閉で制御します。
このため、荷重ゼロ付近で変位制御を行うような場合、精度良く誤差補正を行うことが難しいと言えます。
一方、70MPaサーボシステムでは油圧シリンダの押しと引きを加圧し、差圧制御により目標値到達、
その後の保持を行うため、移動時の制御精度と保持精度が抜群に良いと言えます。
一例として構造実験で行われる柱の大変形加力では、軸力の分力が柱の剪断力として作用し、
試験体水平反力がバネのように荷重・変位関係が一義的ではありません。
このような場合でも安定した変形制御が求められ、70MPaサーボシステムは応えることが可能です。
(b)多軸制御での油圧ユニット台数が減少
加力装置は油圧シリンダ1系統に1台の油圧ポンプが必要です。
少ない系統であれば良いのですが、3系統以上では油圧ポンプの設定スペース確保が面倒です。
70MPaサーボシステムでは油圧ポンプ1台で複数の油圧シリンダへの分配が可能であり、
油圧シリンダの台数が増えた場合メリットが大きいと言えます。
補足ですが、複数軸加力で、一方に高い圧力・少流量、他方に低い圧力・大流量という
組み合わせがあるとき、70MPaサーボシステムでは逆流防止弁が付属していて、
高圧力の油圧シリンダから低圧力の油圧シリンダに油が逆流することを防止します。
(c)輪郭制御の精度が高い
上記(a)項と重複しますが、加力装置は3つの制御要素から構成され、高速オンオフ弁は
負荷圧力の受動的動作として制御を行い、また電磁弁はオンオフ動作であるため滑らかな動作が
難しいという点があります。
このため、到達値のみの評価(ポイント・ツー・ポイント制御)であれば良いのですが、
目標値への移動時の誤差を制限される場合には適しません。
このような用途でも70MPaサーボは問題なく制御が可能です。構造実験での柱の2方向加力
(XY加力)を加力装置で制御を行った場合、一方の軸が最大荷重で他方の軸が最小荷重となる極点で
ふらつきが出ます。
そのため剛性が高い試験体では、変位グラフはともかく、荷重グラフが満足でないという場合があります。
このような場合に、70MPaサーボを使用すると仮動的試験でも問題なく制御可能であるとの結果も得ています。
(d)停電後の復旧が容易
70MPaサーボシステムではサーボ弁ブロック出口に電磁弁が搭載されています。
一方、加力装置ではオプションで吐出口直前に電磁弁を搭載することが可能です。
停電時圧力保持という点では互角と言えます。
一方、停止後の復旧という点で、70MPaサーボシステムはQ&Aの項に記載した通り容易に
復旧できます。それに対して、加力装置は制御開始後の立ち上がりの低さから制御を開始した後、
電磁弁を開けるような操作では一度圧力が抜けてしまいます。
作為的にポンプ側で圧力を立て、ほぼ圧力差が無いことを想定して電磁弁を開ける、
このような操作を取らざるを得ません。
以上から、70MPaサーボシステムが優れていると言えます。
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